
秋刀魚
発行:黒潮文化(台湾)
*中国語繁体字・日本語訳なし
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台湾で刊行される〈日本紹介雑誌〉「秋刀魚」。
台湾視点で特集される「日本」は普段見ている景色にまた違った印象を与えてくれます。
特集テーマも「京都の宿」や「グッドデザイン賞」などスタンダードなものから、「カレー」「コンビニ」「ガチャガチャ」「ラーメン」などのニッチな文化、はては、「下北沢」や「東北」、「香港で見つけた日本」などそこ?という地域特集まで。
言葉はすべて中国語繁体字ですが、紙面の雰囲気は楽しむことができますし、漢字をメインに据えたレイアウトの参考などにも。
もちろん、最近台湾に行けておらず実物が買えない方にも。
誌面サンプルは公式サイトをどうぞ。
(サイト)http://qdymag.com/news/229
(日本語紹介文)
『秋刀魚』編集部ではずっと、その仕上がりを確認するため、印刷所に向かう時間を大事にしている。大きな声で印刷所の職人さんと色の具合を見ながら、濃いインクの匂いや高速で回転する印刷機の音に包まれる。編集者としていちばん幸せなのは、本誌読者の皆様に届ける直前、印刷所で五感をフル回転させる、この時間かもしれない。そうやって紙の本が出来上がる、まさにその瞬間に立ち会えるのが、印刷所という場所だ。そこは見知らぬ誰かに何かを伝えていく、確かな場でもある。
紙の本の話をするからといって、昔はよかった、と言いたいわけではない。ただ、1枚の紙の上には、文字、用紙、印刷、デザイン、そして美しさのすべてが重ねられている。どんなに薄くたって、その1ページ1ページに印刷の奥深さが収まっているのだ。
今回は『秋刀魚』がお届けする特集「プレ2020年デザイン3部作」シリーズの第2弾。私たちはディスプレイでの映像の動きやタッチパネルでのサイズ調整にすっかり慣れてしまったけれど、人類の叡智は紙の印刷が伝えてきたことを忘れてはいけない。印刷の美しさは、最初の聖書における「レイアウト」の誕生に始まり、やがてテキストと印刷物の間に「デザイン」が確立された。数百年という時間をかけて洗練されていく中で、デザイナーは常に新たな手法に挑戦してきた。江戸時代には浮世絵、昭和の頃にはフォント、平成に入るとコミック、さらに最近のミニマルデザインのように、あっと驚くスタイルが生み出されてきた。それらはすべて、印刷という名の実験場で鍛え上げられてきた。
今号では、印刷、用紙、デザインという黄金の三角関係についてじっくり考えていく。日本のブックデザイナー、祖父江慎さんには愛してやまない古書の中で前衛的なデザインのヒントを見つけたお話を伺った。グラフィックデザイナーの高田唯さんには、1本の線の向こうから見える社会について教わった。台湾三大デザイナーのひとり、方序中さんが語ったのは、音を形にするCDジャケットのデザインについてだ。デザインにかかわる方々のお話を伺っていくうちに、印刷というのは機械のことではなく、命を宿したものだと思えてきた。日本の専門誌『デザインのひきだし』編集長の津田淳子さんはこんなふうに言っていた。「たくさんの刺激を受けたことで、印刷の選択肢が広がっていきました。ひとつの雑誌がここまで多様な形で続けてこられた、それこそ『紙の本』が生きている証しだと思います」。
デジタル時代の波を受け、記憶は一過性のものになろうとしている。だが、ひも解いていくと印刷は、デザインを作り上げ、文字に伝える力を与え、記憶を留めながら、人々の知恵を未来へと伝える役割を果たしてきたのだ。