*四種類のスリーブケースがありますが、購入時に指定はできません(ランダム配送です)。ご留意ください。
書肆汽水域
『新しい日々』(芝木好子)
本体 2,000 円+税
ISBN 978-4-9908899-5-1
四六判(丸背・上製本・272頁・スリーブケース入り)
ーーーーーーーーーー
『落としもの』(横田創)、『体温』(多田尋子)など、独自の嗅覚で過去の作品を再紹介してきた書肆汽水域の新刊は、芝木好子。現在は講談社文芸文庫などで読むことができますが、新刊で手に入る本は限られています。
異なる4種類の本体に、同様に異なる4種類のスリーブケースが付属します。タイトル、バーコードは箔押し。非常に美しい本に仕上がりました。この機会に新しい読書に触れてください(もちろん、復刊を心待ちにしていた人にも)。
<本書について>
1942年に「青果の市」で第14回芥川賞を受賞した芝木好子さんには、「洲崎パラダイス」「湯葉」「青磁砧」「隅田川暮色」などの中編・長編小説の代表作がありますが、「十九歳」や「冬の梅」など限られた紙幅の中で男女の関係を濃密に描いた、切れ味の鋭い短編小説も多く書き残されています。
2021年8月、芝木好子さんの没後30年を記念し、これらの短編小説を再編集した作品集を刊行します。梅、牡丹、菖蒲、白百合、白萩、都忘れなど、芝木作品の中で印象的に描かれている「花」に焦点を当て、花の移ろいと人生の移ろいとが重なり合う、滋味豊かな小説集に仕上がりました。
<著者略歴>
芝木 好子(しばき よしこ)
1914年生まれ。1941年に発表した「青果の市」で第14回芥川賞を受賞。自伝三部作である「湯葉」「隅田川」「丸の内八号館」で作風を確立する。代表作に「洲崎パラダイス」「青磁砧」などがある。
<書店員の推薦文>
芝木好子さんの書く小説はどれも一人一人の女性を丁寧に描き、読んでいると花の香りやその部屋の空気が漂ってきそうになる。自分の本棚の中に収めて何度でも読み返して味わいたい作品だった。
青山ブックセンター本店 青木麻衣 (「新しい日々」解説より)
谷崎、あるいはタウトの建築を思わせる陰翳の濃淡が、端整な描写によって全篇に立ち現れる。それは、喪われた日本の抒情そのものであり、戦争が遺した影であり、女の業の哀しみと深さである。
湘南 蔦屋書店 八木寧子 (「脚光」解説より)
終始この物語を支配しているのは孤独で、登場人物たちは皆家族でありながら、それぞれの孤独を埋めることは出来ず、それぞれが月のように暗い宇宙を公転している。
blackbird books 店主 吉川祥一郎 (「白萩」解説より)
人は人に過剰な期待をして、勝手に傷ついたり落ち込んだりする生きものです。好意を持っている相手ならば尚更です。自分の理想を相手に押しつけて、その像と違った場合、裏切られたという感情まで湧いてきます。
SUNNY BOY BOOKS 大川愛 (「晩秋」解説より)
冬の梅には容易に身をひらかない頑なさと、朦朦たる香気が複雑に入り混じる。うららかにほころぶ春の梅ではなく、冬の梅でなくてはいけなかった。あとどれほど成熟すれば、その厳しさに自分は対峙できるだろうか。
三省堂書店成城店 大塚真祐子 (「冬の梅」解説より)
かつての恋を思うとき、若子はきまって庭を見る。その横顔に漂うのは、諦めにも似た清々しさだけ。惜しもうが、悔もうが、青春は遠いまま。だからこそ、美しい。
恵文社一乗寺店 鎌田裕樹 (「遠い青春」解説より)
芝木さんの物語を読んで感じたのは、皆どこか強がっているのではないかということだ。どの物語にも凛としてしたたかと思わせられる主人公が出てくるが、本心では込み上げる思いを抱え、ぐっと堪えている。淡々とした文章なのにその感情が浮かび上がってくるような気がする。
いか文庫 粕川ゆき (「老妓の涙」解説より)
「梅の木も十本ほどありまして、季節には昔のままによく匂います」
この言葉の意味するところを真に理解できるのは、おそらく由木だけだろう。私にはそれが愛の言葉であり、呪いの言葉のようにも思える。
弐拾dB 藤井基二 (「十九歳」解説より)