秋刀魚
発行:黒潮文化(台湾)
*中国語繁体字・日本語訳なし
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台湾で刊行される〈日本紹介雑誌〉「秋刀魚」。
台湾視点で特集される「日本」は普段見ている景色にまた違った印象を与えてくれます。
特集テーマも「京都の宿」や「グッドデザイン賞」などスタンダードなものから、「カレー」「コンビニ」「ガチャガチャ」「ラーメン」などのニッチな文化、はては、「下北沢」や「東北」、「香港で見つけた日本」などそこ?という地域特集まで。
言葉はすべて中国語繁体字ですが、紙面の雰囲気は楽しむことができますし、漢字をメインに据えたレイアウトの参考などにも。
もちろん、最近台湾に行けておらず実物が買えない方にも。
誌面サンプルは公式サイトをどうぞ。
(サイト)http://qdymag.com/news/275
(日本語紹介文)
初めてラーメン食べたときのこと、覚えてますか?
2013年、生まれて初めて日本に行って、当時流行だった「一蘭ラーメン」を日程に組み入れた。表参道にある原宿店にして、表参道で買い物してから明治神宮に詣でる前にエネルギーを補給するというのは、初めて東京を訪れたビギナーにとってベーシックなコースだろう。隊伍に従って一歩一歩近づいていく。スマホのページをめくり続けてブロガーたちのおすすめをチェックしつつ、注文したい品の名をつぶやきながら、麺の「替え玉」はいらない、味付け卵の「味玉」を追加、スープは塩からいから全部飲まなくでもいい、などと自分に言い聞かせる。いざ、食べるときには、ずるずると大きな音を出してすすり、初めてラーメンを食べると決めた心に対して丁寧に報いたのを記憶している。
数年たって、台湾人が日本に行って食べるラーメンと聞いたら、一蘭から無敵家、一風堂になり、最近はAFURIが出てきた。ラーメンは常に、台湾人、日本大好きの象徴であり、日本オタクの隆盛、そして旅行の情報源がブログからSNSに移り変わるまでの時代の変遷を見届けるとともに、「日本のラーメンって、すごく塩からいんだって」から「自分に合うラーメンを見つける」ところまで台湾人が進化するのをリードしてきた。小さな鉢に盛られたラーメンは、濃厚なスープ、巧みな麺打ちの技をたたえるだけでなく、台湾人の心の中の日本像をリードしており、数年で大幅に入れ替わる「ラーメン屋ベスト10」があれば、日本を訪れるたびに、新たな人気ラーメンとの出会いを期待できるという台湾人も多い。
高度な職人技、こだわりというラーメンの世界に向き合う一方で、小誌は創刊6年以来「ラーメン」を特集したことがなかった。今年になって、感染拡大による日台往来の一時的中断により、「あーあ、日本に行きたいな、そうだ、ラーメンでも食べよう!」という思いが「ホームシック」ならぬ「ジャパンシック症候群」にかかった人たちの中に沸き起こっていることから、編集部も肩の力を抜いて「単に食べたい」という原点に戻り、「台北ラーメン」を皮切りに、快楽と元気をくれるラーメンを紹介してみたい。
日本では7月11日は「ラーメンの日」。日付は7をレンゲに、11を箸に見立てており、日本で最初にラーメンを食べた人とされる水戸黄門の誕生日でもある。小誌夏号は、初めて食べるラーメンを待っているときの気持ちを思い起こすかのように、「台北ラーメン」と題して一番食べたい日本の味を振り返る。もう何度も食べたとはいえ、あの初めて食べるときの期待感は、ほんとに忘れられないものだ。