秋刀魚
発行:黒潮文化(台湾)
*中国語繁体字・日本語訳なし
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台湾で刊行される〈日本紹介雑誌〉「秋刀魚」。
台湾視点で特集される「日本」は普段見ている景色にまた違った印象を与えてくれます。
特集テーマも「京都の宿」や「グッドデザイン賞」などスタンダードなものから、「カレー」「コンビニ」「ガチャガチャ」「ラーメン」などのニッチな文化、はては、「下北沢」や「東北」、「香港で見つけた日本」などそこ?という地域特集まで。
言葉はすべて中国語繁体字ですが、紙面の雰囲気は楽しむことができますし、漢字をメインに据えたレイアウトの参考などにも。
もちろん、最近台湾に行けておらず実物が買えない方にも。
誌面サンプルは公式サイトをどうぞ。
(サイト)http://qdymag.com/news/152
(日本語紹介文)
夜について、やっぱり東京タワーが好きだな。
もし二つの文字だけで現代都市の建設や流行、また人と人との距離を示すなら、「東京」というのは唯一の正解になる。東京は、世界中でどこでも通用する符号みたいに、いっぱい説明をしなくても、皆さんの頭の中にかならず東京に対するイメージを持つ。また、すごく速いスピードで発展する大都市での全ての感情も、東京という名で説明できる。
東京女子図鑑というドラマの中、主人公の綾は憧れられる女性になりたかったので、秋だから東京まで行った。20代前期は三軒茶屋という庶民雰囲気が溢れる串焼き屋で友達と食事し、28歳のときは毎週末の夜恵比寿駅で女性たちと合流して合コンへ行った。30代になってからファッションの発信地である銀座へ、高級レストランでステーキを食べたりする。おもしろいところは、このようなポジションの転換について、すべてある時間帯に発生する行為と関係ある。それは、夜ということだ。どの会社で働き、給料がいくらもらえ、どのような人と交際し、このような全て量化可能な価値は、深夜のときどのエリアにいることによってその人のポジションを示すことと比べられない。自分のポジションをはやく見つけ出したい東京人と比べると、深夜食堂というドラマの中に写す夜のほうが暖かく感じられる。一つの料理で一つの物語を語り、深夜という二つの文字を告白の時間帯だと定義する。そのため、「夜」の東京はわれわれが探求するテーマになった。
今回、夜9時以降のことを特集の時間軸にしたけど、ふとドキュメンタリーの東京画を思い出した。ドイツの映画監督として知られるヴィム・ヴェンダースが小津安二郎を敬愛する気持ちを持って、1985年にカメラを持って東京へ一生忘れられない景色を探しに行った。80年代の渋谷・戦後繁盛したパチンコ、アメリカ文化の衝撃を受けたロック少年、また鎌倉で無という一文字刻まれた小津安二郎の墓石まで見に行った。ドキュメンタリーの東京画の2017年にリメイクしたバージョンはタイムカプセルみたいに、それをみたら32年前のヴィム・ヴェンダースが当時一番新鮮な東京を述べながら、いなくなって20年たった小津氏のことを考えたような感じがする。このドキュメンタリーは夜のシーンが半分ぐらい占め、色彩の映像で小津安二郎のことを記録した白黒映画のようだ。
「心というのは、他人に永遠に理解できないところだ。」-東京画
東京の夜は、居酒屋で乾杯するときの音みたいに、にぎやかだが、かなり孤独だと感じられる。しかし、東京というところこそ、小津安二郎が生涯中に一つだけの物語を述べ、同じカメラマンを信用し、50ミリのレンズしか使わない、同じ都市しか撮らないことになったわけだ。小津安二郎の映画は、これらの夜の感情が含まれるため、東京で人と人との関係が都市でいかにリアルではないようだけど、本当は存在するということが記録できた。
2013年、初めて東京へ行った自分がいろいろなお店・展示会・本屋を行ってきたが、それらの経験は夜に東京タワーの下に立って、仰向いてみるシーンとは比べられない。東京タワーは、もう一番高いタワーではなく、新鮮度もスカイツリーに負けている。しかし、私にとって、夜ライトアップする東京タワーは、美しい夜景を見るためではなく、過去の自分を思い出せるためだと思う。
海外から東京に来る人々は、初めて東京を訪問する際、夜にある程度この都市の愛と距離が感じられる。その後、50ミリの視野内、我々は東京深夜のフィルムに一刻の記録を残せた。
東京のことが好きかどうかはかまいなく、東京というところは、こんなに都市の混沌と媚びを叫び続けるところだ。