


「絵本のなかへ帰る(完全版)」
著:髙村志保
出版:夏葉社
装画:きくちちき
価格:1600円+税
判型:四六版変形、上製、192頁
ーーーーーーーーーー
長野県茅野駅前の「今井書店」店主、髙村志保さんのエッセイ集。
数編新作を加えて、完全版として再刊行。
以下は、割と気に入っている、旧版の時に書いた紹介の再録です。
一つ一つ絵本がサブタイトルとなるエッセイですが、そこに書かれているのは絵本の紹介ではなく、あのとき、そのときに傍にあった絵本、あるいは絵本から想起されたあの時の話。そこで語られるのは本屋の娘、本屋の店主であった著者の人生です。
ごくごく個人的で偏見をまとった話をすると、絵本というのは本屋のなかではわりと独自のジャンルを築いています。絵本専門店はもとより、その販売促進の方法も、出版社の経営も一般書とは異なることの多いジャンルです。「絵本のファン」「絵本の促進」といった活動も(もちろん他の本でも同様に存在するとはいえ)目立つものです。
反面、どうにも苦手だな、あまり詳しくないな、と思ってしまう人が、本屋業界でも、あるいは読者の方のなかでも一定数いるジャンルでしょう。ぼくも割とそうです。
『絵本のなかへ帰る』を一編読んで感じたのは、しかしそれは他の本と等しく、だれにとっても人の暮らしや成長に不可分に結びついているということ。好きとか嫌いとか、詳しいとか詳しくないとかそういう些末なことはほうっておいて、ただあのとき、あの瞬間、この本と人生が交差したことがあったはずだ、という思い出。
本と人生が結びつく瞬間は、いつでも楽しく、良いものです。