



『会社員の哲学[増補版]』
著:柿内正午
出版:零貨店アカミミ
判型:新書サイズ、160頁
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『プルーストを読む生活』ほか日記本で知られる柿内正午による、初の単発本の新装増補版。
改訂に加え、一章追加されています。
著者の作風を広げたであろう「哲学エッセイふう」の作品は、日々をなんとかかんとか生きていくための思想書として、いつもよりちょっと広めの人(2021年初版刊行当時換算)に読まれました。
“無名で、目立たない凡庸な賃労働社の思想。そういう本がなぜ少ないかって、無名であるからだし、凡庸であるからだ。そもそも著者が見出されないし、見出だせたとしても売れはしないだろう。つまり、個人が勝手に作って、勝手に売るしかないのだ。僕が読みたいから僕が作る。無名で、凡庸な会社員の思想書を。”
常に会社員、素人を慎みと敬意をもって自称する著者が、日々の労働と読書の中で見出した、賃金、会社、個人、社会。会社員としてサヴァイブしていくための、ある凡庸な個人が見出した哲学。
柿内正午の関連本↓
https://stores.jp/search?q=%E6%9F%BF%E5%86%85%E6%AD%A3%E5%8D%88&store=mardock
(以下、出版元からの紹介文)
2021年に発表し、ご好評いただいた哲学風エッセイが新書サイズになって帰ってくる。
読みやすさを向上させる改訂や、一章ぶんの増補を加え、より親しみやすい一冊になりました。
「会社員」というありふれているようでどうにも特異な立場から、現代社会を描き直す。
無名で、凡庸な会社員が書く当事者研究であり、民族誌であり、思想書であり、哲学書。
「素人が哲学や政治や経済を語るという、本来まったく普通のことが、異様なことのように捉えられるのは非常におかしい。僕は素人として、いけしゃあしゃあと、生煮えの持論を振りかざしてみようと思う。あらゆるイズムで簡単にわかった気になることもできる限り避けながら、自分個人の生活から、これはしっくりくるなあという考えだけを頼りに、いったん自分で考えてみたことを、素人臭い手法で書き進めていこうと思う。この試みはまた、素人であることの肯定が、そのまま無思慮や専門知の軽視を意味するわけではないということの表明にもなるだろう。まず自分の手持ちの語彙で言葉にしてみないことには、より確度の高い知識へのアクセスもできないんじゃないか。
自分の頭で考えるというのは、自分に都合のいい世界観だけに従順な生徒根性でもなければ、自意識過剰で安易な逆張り精神でもない。なんかもっとよりよく生きたいなーという、それ自体はなんの変哲もない欲求から始めてみることなのだと、僕は考えている。 」
(「はじめに」より)