







代わりに読む人
『うろん紀行』(わかしょ文庫)
本体 2,200円+税
四六判上製本 200頁(一部カラー)
ISBN 978-4-9910743-3-2 C0093
装幀:コバヤシタケシ
装画:高田綾菜
校正:サワラギ校正部
印刷製本:藤原印刷株式会社
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『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する』シリーズの代わりに読む人より、新刊の刊行です。今回は「わかしょ文庫」さんという新進気鋭の著者の初単行本です。
詳細は編集者の「刊行のことば」に譲りますが、出版社・代わりに読む人の社是「可笑しさで世界をすこしだけ拡げる」に相応しい「可笑しさ」の中に、著者独特の悲しさが同居している文章は、吸い込まれるように読ませられてしまう魅力を持っています。
装幀は丸背の上製本。非常に開きが良いです。本文は見返しに加え、差し込みの紙が二種類。これらの紙の色味が微妙に異なっており、カバーから最初の文章が始まるまでの、没入感がとてもあります。一部カラー写真のいれどころも素晴らしく、「一冊の本」として、読むための形、読書体験の形がとても巧みに作り込まれている装幀になっています。
(著者プロフィール)
わかしょ文庫(わかしょぶんこ) 1991年生まれ。インディーズ作文家。著書に『ランバダ』シリーズがある。
(刊行のことば)
二年前の春のことです。わかしょ文庫さんが自主制作されたエッセイ集『ランバダ』の冒頭を載せた告知を見た瞬間に、私は衝撃を受けました。そこに書かれていた個人的な体験の壮絶さもさることながら、その出来事を描く彼女の硬質で、端正な文体の魅力に圧倒されたからです。それは、間違いなく、多くの文学作品を読み自らものにしてきた、見事な文章でした。偶然にも私はものすごいものと出会ってしまった。彼女の書く文章をもっと読んでみたい。彼女の目を通して見てみたいと思いました。気付いた時には、私は連載を依頼するメールを書いていたのです。こうして、わかしょ文庫さんが小説を読み、どこかの駅へ出かけ、何かを思うという「うろん紀行」がはじまりました。毎回私は一人の読者として楽しく、時に胸を打たれながら読みました。そして文体は進化していくのを目の当たりにし、頼んだのは間違いではなかったと繰り返し思ったのです。十二回の連載の後、いくつかの章の書き下ろしを加えて、この度、約二年の準備を経て、書籍『うろん紀行』を刊行いたします。ここでは一人の人が本を読み、考えることで自分と折り合いをつけていくという極めて普遍的な物語が提示されています。多くの人にわかしょ文庫さんの文章に触れていただき、またそこで読まれている文学作品や訪ねた土地に興味を持っていただけるのではないか、自分でも読んだり訪ねたりしたくなってもらえるのではないかと期待を持っています。