秋刀魚
発行:黒潮文化(台湾)
*中国語繁体字・日本語訳なし
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台湾で刊行される〈日本紹介雑誌〉「秋刀魚」。
台湾視点で特集される「日本」は普段見ている景色にまた違った印象を与えてくれます。
特集テーマも「京都の宿」や「グッドデザイン賞」などスタンダードなものから、「カレー」「コンビニ」「ガチャガチャ」「ラーメン」などのニッチな文化、はては、「下北沢」や「東北」、「香港で見つけた日本」などそこ?という地域特集まで。
言葉はすべて中国語繁体字ですが、紙面の雰囲気は楽しむことができますし、漢字をメインに据えたレイアウトの参考などにも。
もちろん、最近台湾に行けておらず実物が買えない方にも。
誌面サンプルは公式サイトをどうぞ。
(サイト)http://qdymag.com/news/296
(日本語紹介文)
昭和を代表する総合生活雑誌『暮しの手帖』は日本人の庶民生活を変えた。モノが不足していた終戦後の暮し。この雑誌は簡単で役に立つ提案を通して、たとえば浴衣をおしゃれなワンピースに改造したり、有名レストランにレシピを提供してもらったりと、女性の日常に「ファッション」の感覚を持ち込んだ。いちばん好評だった「商品テスト」のコーナーでは、科学的にうなづける方法で家電や日用品を実際に使ってみて、広告主を全く気にする必要のない客観的な視点から、長所と短所をありのままに書き連ね、消費市場という可能性を読者に気付かせた。高度経済成長を経て平成に入り、バブル期の危機を通過したとはいえ、人々は高度な買い物術を身に付け、消費がピークアウトして「断捨離」という取捨選択の時代になり、「ほしい」から「買う」までのはざまで、暮しの必需品がシャッフルされた。
令和になって、小誌編集部は丸1年、日本の土を踏んでいない。仲間たちは、なんとなく調子がおかしい「ジャパンシック」の症状が出はじめた。単純きわまりないコンビニの缶コーヒーとか、すき焼きの隠し味としての柚子胡椒とか、しばしストレスから解放される横町の銭湯でのひと時とか。こんな平凡な望みが、自分の「理想とする生活必需品リスト」が全面的に入れ替わったことを教えてくれた。これを悟るまで、「自分が心から愛せる」、「自分にふさわしい」ライフスタイルを取捨選択しているのだ。
今回は開き直って、旅に出られない時代を見つめれば、どんな「時代の暮しリスト」を構築できるか、と考えてみた。バーゲンセールの時、日本で爆買いはできないが、オンラインの中古衣類ストアで思いがけないニュー「スタイル」をさがせる。生活に洗練さを加えるため、アーティストによる少量生産だがよくできている「生活雑貨」に旅行予算を回せる。台湾まで空輸された「食材」を使って、台湾料理の手法を用い、フュージョン日本料理を作れる。リアリティツールにより「コンピュータゲーム」を五感インタラクティブエンタテインメントに変えられる。クラウドを利用し、オンライン美術館を参観し、アート探訪の期待を満たせる。物理的な距離が関係ないネットでつながり、リアルのオフラインと融合させれば、巣ごもり消費が常態化した2020年に、日台ゼロ時差のライフスタイル探訪の完全な記録ができるだろう。
自分が本当にほしい日用品を整理することから、予算オーバーへの割り切り方まで、今年はまた新しいテーマに遭遇した。自分が本当に必要なモノを知ること。海外旅行ができないため、衝動買いが少なくなったかもしれないが、真摯なまなざしで身の回りのものを見つめる。お金持ちでなくても、自分らしさを積み上げられるのだから。