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製本と自由

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『製本と自由』 著:向田鉄 印刷製本発行:生活綴方出版部 価格:700円+税 仕様:文庫版36頁、リソグラフ印刷、中綴ホチキス製本 ーーーーーーーーーー 本屋の店番としてレジに立ち、その合間に印刷された本を製本する。 リソグラフ印刷を一つ一つ重ねて綴る形で本を制作する生活綴方出版部の、多くの製作を手掛ける個人が、綴ったエッセイ集。 全手製本人必読。 “この1年半の妙蓮寺での時間は、本は自分の手でつくれるということを体現してきた日々だ” 私事で恐縮だが、本webサイトの購入特典である「H.A.Bノ冊子」は文庫版なのだが、最初はA3の紙に両面印刷をしてそれ4枚に断裁、重ね合わせてホチキス留めをする、という形で四半期に500部づつ制作していた。僕一人で。 そういう手を動かす作業がいかに、面倒くさくて、しかしやめられないというか、それは中毒性があるという意味ではなく、やめたら本ができないという、極めて現実的な意味でやめられない、というものであるのか、あまりにも理解している。 そこに効能などはない。やらなくてすむならやらないほうがいい。実際、「冊子」は現在印刷所に製本してもらっている。 ただ、なんだかうまく紙が折れたとき、人生で一度も使い切ったことがなかったホッチキスの替芯をダースで買い増したとき、ずっと折り目をつけるのに使用していた1996年のカレンダー付き30センチプラスチック定規の端が、摩擦で削れてなめらかにカーブした、その断面にふれるときに、なんとなく充実感を感じられる、ただそれだけの苦行である。 当店は、新刊をつくるたびに何某かの特典を制作しており、『ナンセンスな問い』のときは文庫(A6)判4頁だったので、A5の紙を数百枚2つに折った。『パリと本屋さん』の特典は8頁だったので、A4の両面印刷で発注して、2枚に断裁したあと、2つ重ねて半分に折っていて、いまも後ろに、まだ折っていないその紙がある。 製本した本は、広辞苑などを重しに一晩潰すのが良い。 面倒くさいのだが、なんとなく辞めたくもない。手を動かすことでしか完成しない実体と、整う身体が、そこにあるからだ。 (以下、出版元サイトより引用) 「製本する身体が自分の呼吸を助けてくれる」 生活綴方出版部の本はだいたい彼の手が入っている。手先が器用ではない、熟練でもない。うまくいかないこともある。それでも彼が製本に取り組むのは自由のためだ。「製本のリズムやうねりに身を投じていると気楽になれる。考えすぎたり言葉を選びすぎたりして口を噤んでしまう自分を解いてくれる。そんな時は言い淀みも、尻すぼみも気にせず流れるままに人と話せる」。生活綴方での本づくりを“見習い製本工”の視点から綴った記録集としても面白い。

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