{{detailCtrl.mainImageIndex + 1}}/5

本屋で待つ

残り2点

1,760円

送料についてはこちら

『本屋で待つ』 著:佐藤友則、島田潤一郎 出版:夏葉社 判型:120×180/298p/上製本 ーーーーーーーーーー ぼくが勤めていた取次会社を辞めてすぐ、ウィー東城店を訪れたことがある。それは、当時参加していたNPO法人の取材を兼ねたもので、なぜその取材者に僕が選ばれたかというと、こいつは暇そうだし、無職だから少し予算がついた仕事をあげよう、という全体のやさしさによる合意、みたいなもので、僕も参加していた会議の席上で、つまり僕の目の前でその空気感とともに決まった。 僕はもちろん、断る理由が何もなかった。 この頃すでに、ウィー東城店の佐藤店長は、面白い取り組みをする書店主として、業界では話題になっていた。 最寄り、ではなく、おそらく「普通の電車」で一番出やすい駅、で待ち合わせて、店主の佐藤さんに車で迎えにきてもらった。確か集合場所はその駅から徒歩数分の書店ではなかったか。車はひたすら、山中を通った。 開けた、といっても「山あい」という具合の場所に、ウィー東城店はあった。 駐車場に車を停めて降りると、店裏の原っぱを指して、「僕そのうち、ここで畑やりたいんですよね」と佐藤さんは言った。店内に入ると、入り口には農文教のフェアが行われていた。 しばらく店内をご案内いただき、バックヤードで取材をしたのち、うちの本店へどうぞ、とまた少し車を走らせた。 今度は開けたとすらいえない、文字通り山あい(間)に道を通したというような斜面に沿って、小さな建物が建っていた。そこに何があったかはあまり覚えていない。タバコ、少数の文具や雑誌、あとは化粧品などではなかったか。 「僕が子どもの頃、あの店は出禁でした」。その集落には少し歩いたところに、古い本屋がもう一軒あった。入り口はくすんでおり、店の本も焼けてくすんでいた。僕はそこで色褪せた橋本治の文庫本を定価で買った。佐藤さんはその店には入らず、車の中でずっと待っていた。 農業書の価値も、出禁の本屋も、あるいは「業界」が「話題」にすることの善悪も、あの頃のぼくはよくわかっていなかった。それでも親身に接してくださっていたことが、いまはわかる。 いまとなっては、覚えているのはこのくらいだ。ここまで本を読まずに書いた。 本でもう一度会えるのが嬉しい。 H.A.B店主 (帯文より抜粋) 町の人たちがなんでも相談にくる山間の本屋、「ウィー東城店」。地域の小売店の可能性と、そこで成長する若者たちの姿を描く。

セール中のアイテム