著者 大竹昭子
判型 文庫版(w105×h148mm)、並製、カバー無し
表紙 NTラシャ 130kg
ページ数 61ページ
定価 900円(本体価格)
発行所 カタリココ文庫
編集協力 大林えり子(ポポタム)
装幀 横山 雄+大橋悠治(BOOTLEG)
写真 森山大道
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*『新潮』2020年7月号に掲載された同名原稿を加筆修正し、早くも書籍化。森山大道さんとのコロナ下で行われた最新のインタビュー(オフトーク)に加え、森山大道略年譜も追加収録。スナップショットをドナルド・キーン『百代の過客』から日本の日記文学の伝統と紐づけて語る意欲的かつ、自粛期間において「日記」が注目されたことを鑑みると、非常にタイムリーでもあるテーマ設定。文庫サイズながら、随所に挿入された森山大道作品も論考とともに力強く迫ってきます。
(カタリココ文庫より・プレスリリース)
カタリココ文庫「散文シリーズ」第2弾として、大竹昭子随想録『スナップショットは日記か? 森山大道の写真と日本の日記文学の伝統』をお届けいたします。
ハッセルブラッド国際写真賞という、世界の写真家にとってもっとも名誉ある、写真界のノーベル賞とも言われる写真賞があります。昨年、40周年をむかえた節目の年に、森山大道にこの賞が贈られました。
本書は、スウェーデンのヨーテボリで行われた授賞式の模様を皮切りに、森山大道の写真の核心を探っていくものです。森山の写真は、街路で目にしたものをスナップショットするという単純な方法で撮られていながら、世界が異界に満ち満ちていることを見る者に突きつけます。
日々歩いて撮るというシンプルさと、それが生みだすイメージとの飛躍。
著者はこの2点に注目し、そこにドナルド・キーンが『百代の過客』のなかで指摘した日本の日記文学の伝統が息づいているのではないかと考えます。スナップショットは1950年代、カメラの小型化とともに広まりましたが、世界的には衰退する傾向にあります。
ところが、日本では森山大道をはじめとしてこれにこだわる写真家は多く、若い世代にも引き継がれています。
そこに平安時代以来の日記文学の伝統がかたちを変えて継承されているのではないか、という著者の指摘は、コロナ禍にあって日記が見直されているいま、さまざまな方向に考えを発展させる可能性を秘めています。
また本書の文章スタイルも、旅紀行やエッセイや評論の要素を併せ持ちながらも、そのどれにも属さない独自なものです。これについて著者はつぎのように述べています。
「写真について書かれた本は、専門用語や思想書からの引用が多く、難解になりがちです。写真はだれでも撮れる身近なものにもかかわらず、それについて語ろうとするとどうして難しい文章になるのか、というのは長らく私の疑問でした。今回の本ではそれに挑戦し、写真の外に立って内部を観察しようと試みました。写真に関心のある人はもちろん、そうではない人にも自然に入り読み終えることができればうれしいです」
本稿の初出は『新潮』(2020年7月号)で、それに6月19日に行った森山大道への最新インタビューを収録して1冊にまとめました。折りしも東京都写真美術館では森山大道展が開催中です。森山の生い立ちや写真との出会いにも触れ、巻末に略年譜が付いた本書は、森山大道の写真を知るための手引きにもなるでしょう。