





『小さい本屋の小さい小説』
著:かとうひろみ
発行・印刷・製本:本屋・生活綴方
装丁・装画: 佐々木未来
企画・レイアウト:中岡祐介(三輪舎)
52ページ/リソグラフ印刷/中綴じ製本製本
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12本の小さな物語。
本屋生活綴方にて、毎月発行されたフリーペーパーに載せた短編小説の集成。
日常の中の少しのズレ。
文庫サイズ2~3頁ほどの文章で、深いところまで沈んでいくようなホラーと、ちょっとしたユーモア。
印象的なかわいい表紙のイラストは数編読むと、随分と印象が変わるかもしれません。
もちろん、それ故に、おすすめです。
(以下、出版元サイトより抜粋)
普段帰りの遅い夫が、珍しくその日は早く帰った。手にはビニール袋を提げている。はい、と渡されて中を覗くと、ビニール袋の中には小さな魚がぎっしり入っている。
「魚、そんなにたくさんどうするの」
「飼おうか」
「だって全部死んでるじゃない」
「じゃあ食べよう」
そう言った夫の目はたしかにそのとき、ビニール袋の中の魚の目と同じくらい死んでいたのに、私はそれに気づかないふりをしたのだった。
(「タソガレ」冒頭より引用)
我々は生活のなかの違和感に「気づかないふり」をして生きている。違和感がない日が二日もつづくことなど、本当はありえないのだ。だからといって、いちいちそれにかまっていたら、からだがもたない。いつしか我々は違和感に「気づかないふり」をしていた事実を忘れてしまっているのだ。
――という想像を掻き立てる冒頭の短編「タソガレ」を、まずは必読。本屋・生活綴方で12ヶ月連続で無料で配布したショートショート「小さい本屋の小さい小説」12編が一冊に。