
私と鰐と妹の部屋
大前粟生 書肆侃侃房
「妹の右目からビームが出て止まらない。」「こっくりさんと暮らして七十年になる。」一行目から引きが強い。とても奇妙なはじまりだ。けれど、大前粟生の筆はただそのまま奇想を広げていくだけではなく、今の社会が抱える切実さを同時に掬い上げてくれる。長くても4ページ、短ければ1ページで収まる53の物語は、全体でひとつのかたまりにも思えて、不思議な魅力がつまっている。文芸の世界に現れた新星による、とてもハチャメチャで、とても優しい掌編集。まずは一編、ご賞味あれ。
toi books/磯上竜也/大阪・本町の本屋。今年も色々やっていきます。